オリンピックにも採用されるアーバンスポーツと、企業のマーケティング活用

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オリンピックにも採用されるアーバンスポーツと、企業のマーケティング活用

「アーバンスポーツ」は、その誕生や、選手との関係も他のスポーツと異なる点が多数あります。またオリンピック競技に採用され始め注目を集めつつあり、マーケティング活用としてはまだまだ新しい可能性を秘めたコンテンツです。今回は、アーバンスポーツ誕生の経緯から現状、今後の活用のヒントについてご紹介していきたいと思います。


アーバンスポーツとは

アーバンスポーツとは、高さ・速さ・離れ業、それを連続的に繰り広げられる華麗な演技を競い合う「エクストリームスポーツ」の中でも、「都市型スポーツ」競技として確立したもの、とされています。

エクストリームスポーツが個人の技に対する個性表現の追求や精神的な満足度を充足させることに重きを置いている点において、多少スポーツ競技とは異なるといった声もある中、アーバンスポーツは以下の定義で分類されています。

  • 広い競技場を必要とせず、街中の小スペースで始められる
  • 部活動やスポーツクラブからスタートし、プロへと成長する「ピラミッド型」の成長過程と異なる(※2022年5月、全国初の高校クラブ活動が岡山で誕生、大学のサークルは多数存在)
  • そのため、いつスタートしても楽しめ、指導者は自分の意志で変えることができ、生涯楽しむことができる
  • プロへの道が他のスポーツと比較して、容易ともいえる
パリオリンピックで新たに採用されたブレイクダンスなど、話題になっているスポーツコンテンツであり、今後の成長が期待されます。また、音楽や芸術との親和性が高く、SNSを活用した普及スピードが非常に速いのも特徴といえます。

Tips エクストリームスポーツ(Xスポーツ)の中でも都市型スポーツと定義され、今後の発展が期待される=先行投資で企業と共に成長イメージを植え付けやすい

アーバンスポーツの誕生から現在まで

アーバンスポーツの一つであるスケートボードは、1940年代にカリフォルニアにおいて、木の板に鉄製の戸車を取り付け、滑って遊んだのが発祥とされています(所説あり)。その後、ローラーサーフィンとして現在のスケートボードの原型が発売され、今に至っています。ブレイクダンスも1970年代のニューヨークで誕生したストリートダンスの一種といわれており、歴史は決して短くはありません。

現状、「アーバンスポーツ」と定義されている種目は以下が挙げられます。

  • インラインスケート
  • スケートボード(東京2020大会・新採用)
  • スポーツクライミング(東京2020大会・新採用)
  • バスケットボール(3x3)(東京2020大会・新採用)
  • パルクール
  • BMX(東京2020大会・新採用)
  • ブレイクダンス
東京オリンピックの競技種目として新たに採用された種目が多数あり、日本においては2018年、一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会(JUSC)が発足し、東京2020大会に向けた準備としてさまざまな支援・競技としての整備が加速していくことになりました。
JUSCのホームページを見ると、渡邉守成会長からの「ご挨拶」として以下の目的・理念が掲げられています。

このたび日本のアーバンスポーツ普及促進と、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成という二つの目標を掲げ「一般社団法人 日本アーバンスポーツ支援協議会」を発足いたしました。昨今、若者のスポーツ離れが世界的な現象となり、IOC(国際オリンピック委員会)をはじめとする世界のスポーツ関係者の高い関心を集めています。超少子高齢化を迎える我が国においても若年層のスポーツへの関心が薄れており、私個人としても、東京2020を契機に解決すべき課題としてこれを捉え、新しい道を模索しておりました。そうした中、都市の環境でコンパクトなサイズの競技会を開催し、そこに音楽やファッション等のエンタテインメント的な要素も組み入れ、来場者が自由に観戦し、楽しめるアーバンスポーツイベントを提起し、実行することとしました。こうした新しいスタイルのイベントの開催を通じて、日本の若年層にあらためてスポーツへの関心もってもらい、2020年の東京オリンピックの成功と国内のアーバンスポーツの普及促進に邁進していく所存です。
(以上、JUSC公式HPより引用)

つまり、現代社会の課題解決の一つとして、アーバンスポーツの果たす役割は大きいものと考えられます。

Tips アーバンスポーツは「若者のスポーツ離れ」「都市における広大な競技場・アリーナ不足」といった社会課題への答えにつながる可能性がある。

企業のマーケティング課題解決へのヒント

エクストリームスポーツの中でも都市型のスポーツと定義されるのがアーバンスポーツである話は冒頭で触れましたが、1997年、エクストリームスポーツ好きの学生エヴァ・アンドレ=ブノワがフランス南部モンベリエにて国際競技大会「エクストリームスポーツ国際フェスティバル(FISE・フィセ)」を開催、のちにアーバンスポーツの大会として確立していきました。日本においてもJUSCが発足した3か月後の2018年4月、広島において「FISE Hiroshima2018」が開催され、翌2019年にも同じく広島において開催されました(2020年は新型コロナ感染拡大防止のため2年延期を発表)。

大会協賛には「Red Bull」をはじめ、アクティオ、イオン、NEC、JAL、富士通などの企業が名を連ね、ブースイベントやサプライヤーとして顔認証システムなどのマーケティング活動を行いました。

すでに、大会協賛にとどまらず、スポーツマーケティングの柱であるチーム・団体への支援や選手個人へのスポンサー契約など始まっているものの、まだまだこれからの成長が期待できる黎明期であるといえます。

また、アーバンスポーツの特徴でもある、アートや音楽との融合といった、「芸術的表現」を大切にする文化もマーケティング活動を行う上で重要な視点となっています。選手個人の表現手法や、チームが何を「Cool(カッコいい・いいね!)」ととらえているか、といったポイントにいかに寄り添えるのか、など、協賛企業側だけの視点では成り立たないスポーツであることも留意して計画を進めていく必要もあります。

一方で、選手個人のキャラクターに依存しかねないことや、一部の心ない若者による競技イメージの低下などがリスクともいえます。アーバンスポーツのメインターゲットがZ世代(概ね1990年代半ばから2010年ごろまでに生まれた世代)ということもあり、企業側の押し付け的なメッセージはなかなか消費者に浸透せず、ムダ金に終わってしまう可能性も否めません。とはいえ、今後のさまざまなトライアルが成功の方程式を産む可能性もあり、今が挑戦するチャンスと捉えてもいいかもしれません。

Tips 従来型のスポーツマーケティングと異なる手法にチャレンジでき、若者の信頼を勝ち得た企業が生き残る、といった楽しみな市場である

まとめ

アーバンスポーツは、近場ですぐに始められる手軽さから、「みる」「する」「支える」といったスポーツに関わることで発生する産業や街づくりへの影響は今後計り知れません。大会の開催においても、さまざまな都市が名乗りをあげつつあり、競技場の増設も進んでいます。川崎市などはストリートカルチャー推進都市として、ストリートカルチャーやエクストリームスポーツ等若者文化を活かす方針を発表するなど、都市計画そのものにも影響を与えるようにもなりました。

生涯できるスポーツとして、今後の競技自体の発展と企業の活用手法の進化がとても楽しみなスポーツであるといえます。都市とスポーツ、そこに生活する人間のあり方について、企業が果たす役割について考えてみるのもよいのではないでしょうか。

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