裾野が広く身近なサッカーのマーケティングとは?

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裾野が広く身近なサッカーのマーケティングとは?

世界的なスポーツ大会が開催されると、普段は競技を見ない人でもテレビやスマホで夢中になるのではないでしょうか?

特にサッカー日本代表の活躍は、時に歓喜をもたらし、特に失望をもたらしながら、結末の分からない壮大なドラマのように、多くの人が一喜一憂しながら、その魅力を堪能したと思います。 ここでは、そんなサッカーの魅力をマーケティング面から探ってみようと思います!


マーケティングの基本構造について

まず、マーケティングの基本構造の前にサッカー組織の基本構造についてです。

分かりやすく、図にまとめてみました。(図1)
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ご存じのように国際サッカー連盟はFIFAと呼ばれ、サッカーの国際的な統括団体になります。そして、世界の国や地域は、それぞれヨーロッパ、アジア、南米、北中米カリブ、アフリカ、そしてオセアニアの6大陸団体に加盟しています。この図では3つのレイヤー、つまりFIFA、大陸、そして各国(地域)の3つに分かれており、それぞれが独立したマーケティングスキームを持っているのです。

FIFAのマーケティング

FIFAのマーケティングはざっくり言うと、FIFAそのもののパートナーになるか、FIFAが主催する大会ごとのパートナーになるかに分かれます。

FIFAのパートナーになると基本的にはFIFA主催の大会の協賛権利がセットでついてきます。一方で例えばワールドカップはこのFIFAパートナーがスポンサーになるのに加えて、その大会にのみ協賛する大会パートナーが存在しているのです。

各大陸のマーケティング

各大陸のマーケティングの一番大きな権利は、「ワールドカップやオリンピックなどに出場する最終予選を主催する権利」になります。その主催大会におけるマーケティング権利が各大陸のマーケティングの基本となるので、分かりやすいところで言うと、アジアサッカー連盟(AFC)は、日本が出場するワールドカップアジア最終予選のスポンサーや放映権などを募る権利を持っているのです。

各国のマーケティング

最後に3つ目のレイヤーであり、それぞれのサポーターにとって、最も馴染みの深いのが、その国や地域ごとのマーケティングになります。日本の場合、JFAが日本のサッカー界を統括し代表する国内競技連盟となりますが、JFAが主催する主に国内の大会のマーケティング活動によってもたらされる収入がJFAの大きな財源となり、日本代表を始めとする強化・育成活動を支えています。

マーケティング上、FIFAや大陸ごとの連盟と大きく違うのは、代表チームのマーケティング権利を持っていることです。つまりJFAはサッカー日本代表の権利を持っているのです。


[Tips]
・サッカーのマーケティングはその構造上、主に3つのレイヤー、つまりFIFA、大陸、そして各国(地域)の3つに分かれている
・FIFA、大陸、各国(地域)は、それぞれの主催する大会において権利を持っているが、各国(地域)だけが、代表チームの権利を持っている

裾野の広さと身近さ

国内に目を向けると、各国にはそれぞれリーグが存在し、そのリーグにチームが加盟しています。つまり第1章で説明させて頂いたのが、国(地域)ごとの代表チームによる大会を前提としていますが、それぞれの国には、地域に根差したチームによる大会を実施するリーグが存在しているのです。
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日本の場合は図2にもあるように、プロクラブを前提としているJリーグがJ1からJ2、そしてJ3まで存在し、47都道府県のうち40都道府県にチームがあります。 こうなってくると、気になるのは、Jリーグのクラブがない県はどこか、ということですが、少し脱線しますが、それは福井、滋賀、三重、和歌山、奈良、高知、島根の7県になります。これが言えたらあなたも立派なJリーグ通です!

さて、話を元に戻します。J1からJ3までのチームがあり、それぞれリーグが権利を持っているものと、チームが権利を持っているものがありますが、チームが持っている権利は分かりやすいもので言うと、チームウェアに協賛社のロゴを入れられる権利があります。

2023年時点にて、例えば、北海道コンサドーレ札幌のウェアには北海道銘菓として有名な「白い恋人」の石屋製菓が入っています。ガイナーレ鳥取には地元の銘柄鶏である大山どりが入っており、チームごとに地域を感じさせてくれ、特にその地域の出身者であれば、グッとそのチームを身近に思うことが出来るのではないでしょうか。

さらにサッカーにはプロリーグを支える存在でもある日本フットボールリーグ(JFL)や地域ごとのリーグがあり、これらのチームもスポンサーを募っているのです。 先ほど、Jリーグクラブのない県で登場した三重県には、鈴鹿ポイントゲッターズというJFLのチームがあります。このチームにはキングカズこと三浦知良選手が所属していましたが、鈴鹿市を中心に三重県北勢地域の不動産を扱っている第一不動産販売という会社がスポンサーをしています。

さて、マーケティングについて話を戻すと、TOPレベルから離れれば離れるほど、メディアに露出する機会は少なくなるかもしれません。ただ、一方で、ローカルになればなるほど地元の愛着度や密着度が増してくる場合も多く、そして何よりもスポンサーになるための金額が極めて安価になってくるのです。

とすると、場合によってローカルエリアをターゲットにする地域に根差した企業、もしくは、これから地域に愛してもらおうとする企業にとっては、身近な地元のチームこそが協賛の対象となりうるのです。


[Tips]
・地域に根差したチームのマーケティング権の代表的なものとして、ウェアに協賛社のロゴが入れられる権利がある
・サッカーのプロクラブはJ1からJ3に所属し、さらにJFLや地域リーグにもたくさんのクラブがあり、スポンサーをする対象の裾野は広い
・ローカルになればなるほど、スポンサーになるための金額は安価になるが、愛着度や密着度が増してくる


新しい潮流と活用方法

          
これはサッカーだけでなく、スポーツコンテンツ全般に言えることだと思いますが、その大きな魅力は「ライブ感」にあるのだと思います。

しかも、それを一人で見るのではなく、みんなで見て、巻き込まれ、それがむしろ心地よい。選手やチームや関係者だけでなく、一緒に見ている人たちで繋がり、そしてそれを続けていくことにより絆が生まれ、さらにSNSなどで増幅されていく。それは、活用の仕方によっては、少子高齢化により、特に深刻になっている若者やお年寄りの孤独感を癒すものにもなりうるのです。

ここで、その事例をご紹介させてください。それはカターレ富山というJ3のチームがスポンサーと組んで始まった「Be Supporters!」という取り組みです。

富山県の介護施設が、介護が必要なお年寄りが地元のチームであるカターレ富山を施設で応援する試みを始めたのです。

チームのウェアを身につけ、応援グッズを作って、そして点が入るとタオルを振り回して歓喜する。それは我々がワールドカップの際に日本代表に夢中になったのと、まさに同じ姿なのです。その効用はあらゆるところにあらわれ、まず楽しみを持つことによりイキイキとし、同じチームをみんなで応援することにより、仲間との絆が深まり、更には驚くべきことに普段できなかった動作が、サッカーの応援をすることによって、出来るようになることが多々あったのです。

これは対象となるサッカーが世界レベルのものでも、地域に根差したローカルなものでも同じです。むしろローカルなもののほうが一人一人の「支えている感覚」はより強くなる傾向があり、その効果も期待できるのではないでしょうか。

この「Be Supporters!」の活動は既にカターレ富山だけでなく、川崎フロンターレ、ヴィッセル神戸、レノファ山口の合計4チームに広がりを見せています。

JリーグはJリーグ百年構想として「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」を掲げていますが、スポンサー企業がスポーツの持つ力を通じて、地域やその地域の課題に取り組んでいく新しい流れが、今始まっているのかもしれません。


[Tips]
・スポーツコンテンツの大きな魅力は「ライブ感」にあり、みんなで見て、繋がり、絆が生まれる
・「Be Supporters!」というチームとスポンサー企業と高齢者施設の取り組みが地域の課題解決に繋がっている
・スポンサー企業が、スポーツの持つ力を通じて、地域やその地域の課題に取り組んでいく新しい流れが、今始まっているのかもしれない


まとめ

いかがだったでしょうか?

サッカーは1993年のJリーグ開幕以来、急速に組織が整備され、チームも増え、その結果として日本代表が活躍することが出来るようになりました。ワールドカップや日本代表というと、スケールが大きな話になりますが、実はその裾野は広く、身近にも手ごろな金額で協賛できるチームはあるのです。さらにその地域の課題にも取り組む動きも出てきており、「その地域でますます愛される企業」にチームへの協賛を通じてなっていくことも可能です。

週末、地元のチームの応援に出かけていてはいかがでしょうか?
きっと新しい発見があると思いますよ!

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